3.実践的受験対策
2019年10月31日 15時44分
では実際の入学試験受験対策です。さっそく順次見ていきましょう。3.⑴レッスン・教育を受ける場を選ぶ
独学ではほぼ合格は無理ですので、音大受験予備校か実績のある個人経営の音楽教室に行くことになります。その選び方です。
3.⑵大手音楽教室はダメ
大手楽器メーカーや販売店が展開する音楽教室ではダメです。レッスンのレベルからして、多くの音楽教室では音高・音大受験には不十分なものしかありません。ましてや、音高・音大受験となると、志望校ごとにさまざまな課題や傾向があり、細かい個別指導が必要になります。この点でも、大手音楽教室は対応できません。
したがって、音高・音大受験対策専門の予備校、またはそれに対応できる個人経営の音楽教室でレッスンや勉強を行う必要があります。
3.⑶音大受験予備校や個人音楽教室を選ぶ
まず、「近いから」、「安いから」といった安易な選び方はやめましょう。
第1には、「実績」を見ます。これがもっとも重要です。予備校も個人教室も、自信があれば公表しているはずですので、過去の合格実績を確認しましょう。
それから「評判」。インターネットの口コミ掲示板で情報がみつかれば、参考にしましょう。ただしあまり鵜呑みにはしないように。もっと良いのは、音大にすすんだ親戚、知り合い、先輩がいれば、そういった人たちに聞いてみることです。
さらに、「講師の顔ぶれ・学歴・経歴」です。志望する大学の出身者がいれば、プラスポイントになります。コンクール入賞歴や演奏実績もチェック。
そして、この世界の「ウラ」をちょっと感じさせる話になってしまうのですが、「先生が持っているコネ」が合否を左右することもあるようです。たとえば実技でも学科試験でもほとんど差がないふたりの受験生のうちひとりしか合格にできないとき、面接試験の場で「なんという指導者に師事していたか」と聞くことがあります。そこで先生の名前を出して、面接官が少し笑顔になって「ああ、あの……」という反応ならちょっといい感じ。逆に無反応ならちょっと残念な感じです。
というのは、音楽の世界というのは意外と狭い世界なので、ある程度名のある人なら、全然ちがう地域の人でも音楽関係者なら知っていることが多いのです。レッスンしてくれている先生が志望大学の先生と良い関係を持っているとか、つきあいがなくとも好意や敬意を持たれていれば、それが有利に働くこともある、ということです。この点を考えると、予備校よりも、ある程度有名な先生がやっている個人教室の方が有望とも言えます。
3.⑷レッスンは量よりも質
長時間レッスンできれば理想ですが、学校に通いながらだと一日にせいぜい4~5時間しかレッスンできないでしょう。ですが、音大合格に必要なレッスンは量よりも質。少々時間が短くても、やり方次第です。
・レッスンはかならず録音する
先生の発言も含めてレッスンはすべて録音しましょう。復習の教材にもなりますし、課題点の確認にも使えます。
・大きな目標のもと、小さな目標を立てながら進む
「大きな目標」は、もちろん「合格」です。「小さな目標」は、日々のレッスンや学科の勉強で見えてくる欠点や問題点の克服です。こうした欠点や問題点を洗い出すためにも、レッスンの録音や先生の指摘・助言は大切です。
洗い出した問題点は「〇日までに」と具体的な期限を決め、クリアしていきます。
3.⑸ステージ経験を積む
入試での実技試験を乗り切るためには、できるだけ多くのステージ経験を積むことも重要です。多くの人はずっと小さな頃から発表会などを経験しているので問題ないでしょうが、経験が多すぎて困ることはないので、機会があればコンクールにトライするなどしましょう。
3.⑹コンサートに行く
ハイレベルなパフォーマンスが期待できるコンサートなら、何万円かかろうとも逃さずに聴きに行きましょう。音の粒立ちは肌で感じるものです。メディアを通しては消えてしまうものです。生で見て、聴いてこそ感動も深まります。そして、自分の音楽性も深まるのです。
3.⑺作曲家の生涯、楽曲の研究をする
実技試験にはふつう課題曲があります。すべての受験生が同じ曲で表現力を競うことになります。その表現力を下支えするのは、楽曲に対する深い理解と共感です。そのために、楽曲の研究を深めることはとても重要です。それと同時に、その曲の作曲者についても調べましょう。どんな思いを込めて作曲したのかを知り、共感することも大切です。
3.⑻学科試験の勉強もしっかり
音大の入試は、実技だけでなく学科試験もあります。科目としては国語、英語、そしてまれに社会科が入ることもあります。基礎的な学力があれば十分で、難しい問題は出ませんから、ふつうに学校の勉強をこなしていれば大丈夫です。
3.⑼楽典を学ぶ
音大の入試では、学科試験の一環で「楽典」の問題が出されることが多いです。
楽典とは、音楽活動をするうえでの基礎知識といえるものです。「音楽の文法」や「楽譜の文法」とも呼ばれ、楽譜を読み書きするための決まり事、ルールになります。具体的には、音程、音階、演奏記号、旋法、和音、律動、楽式、和声、対位法、楽器法、音名、拍子といった基礎概念・用語を理解し、それを踏まえて記譜法を理解することです。
多くの音大では、実技ばかりでなく学科試験もあり、その学科試験で楽典の問題が出題されます。楽典を出題しない大学もありますが、なにしろ「楽譜の読み書き」ですから、音楽活動をしていくうえでは知っていた方がもちろん有利です。レッスンを続けてきた中で自然と理解してきた部分も多々あるはずですが、一度はまとめて体系的に把握しておいて損はありません。
そのためにすべき方法は、ほぼ一択です。通称「黄本」と呼ばれる『楽典-理論と実習』(音楽之友社)という参考書・問題集を使います。この本だけで必要十分です。練習問題もたくさんありますので、答えを書き込まないようにして2度か3度、繰り返して読み、問題を解き、というステップをクリアすれば完璧です。
この本を使えば独学でも習得可能ですが、できれば誰か、コツやミスしやすいポイントなどをアドバイスしてくれる人がいた方が助かります。音大受験予備校なら授業があるはずですし、個人経営の音楽教室でももちろん、聞けば先生が教えてくれるはずです。
3.⑽小論文を書く
音高・音大によってはアドミッション・オフィス方式の入試(AO入試)の一環として小論文があります。本番で通用する小論文が書けるようになるためには、とにかく書いて、誰かに読んでもらって、書き直して、また読んでもらって……という練習をしないことには話になりません。やはり、音大受験予備校や個人音楽教室で対応してもらいましょう。